学びの内容

クギミヤ アケミ

釘宮 明美 教授(カトリック教育センター)

専門分野

キリスト教精神史、宗教文学

自己紹介・学生へのメッセージ

大分に生まれ育ち、学生時代を東京で過ごしました。よく名字を珍しがられますが、故郷には多い姓です。子どもの頃は小説家になりたいと夢みるほど文学が好きで、大学でもロシア文学やドイツ文学、国文学などを学んでいた時期があります。友人と同人雑誌を作ったり、喫茶店で何時間も語り合ったり、愛読書を片手に舞台となった外国の地を訪ねてみたり……迷いや悩み、紆余曲折に満ちていた学生時代の、今思えば何とかけがえのない時間だったことかと思います。自分自身の生き方や専門を考える中で、徐々に哲学やキリスト教に対して目が開かれていきました。専門は、森有正、神谷美恵子、エディット・シュタインを中心とするキリスト教思想・比較思想です。その人の生き方を根底から変える森のいう意味での「経験」という考え方に惹かれ、人間経験と宗教、キリスト教信仰と文学との関わりを中心に思想史・精神史の上で位置づけることを当面の課題としています。学生時代の4年間、どうぞ存分に学び冒険し、開かれた心で自分自身の道を見出していってください。よき友、よき師、よき書物との出会いを期待します。
担当科目
キリスト教学ⅠA・ⅠB
宗教学ⅠD/ⅢD、ⅡD/ⅣD
宗教学ⅠG/ⅢG、ⅡG/ⅣG
宗教学ⅠQ/ⅢQ、ⅡQ/ⅣQ
宗教学ⅠW/ⅢW、ⅡW/ⅣW
担当科目の内容
◇キリスト教学ⅠA・ⅠB◇
大学生活を意義あるものにし、人生の意味を深めていくために、私たちの生きる基盤がどこにあるのかをキリスト教を通じて学びます。聖書をベースに絵画や音楽、文学や映像などさまざまな媒体を用いて、知性と感性の両面からキリスト教の人間観と世界観、ならびにその歴史を探ります。私たちのいのちの力を育み、本当の意味で生かしてくれる真理とは何かを共に考えることを目指します。

◇宗教学ⅡD/ⅣD「キリスト教思想演習」◇
この授業では、20世紀のユダヤ人女性哲学者でありカルメル会修道女でもあったエディット・シュタインの最晩年の著作『十字架の学問』を英語で精読します。シュタインは哲学(現象学)を学んだ後にカトリックに改宗し、アウシュヴィッツで亡くなりました。本書は、ナチズムの席捲する時代の暗夜と対峙しながら、16世紀スペインの神秘思想家でカルメル会修道士であった十字架のヨハネの生涯と著作を通して十字架の意味を考察・黙想したものです。分担して訳出し、訳文を作成するとともに、関連するキリスト教思想への理解を深め、テーマに即して聖書の該当箇所を有機的に学んでいきます。

◇宗教学ⅡG/ⅣG「日本におけるキリスト教」◇
宗教は、文化の根底的次元としてさまざまな世界観・人間観を提供しますが、それらはすべて「人間とは何か」「私とは何か」「生きるとは何か」という問いに帰着します。人はなぜ宗教を必要とするのでしょうか。宗教や神なくして生きることは、不可能なのでしょうか。この授業では、日本におけるキリスト教受容の歴史を振り返り、日本の思想史・精神史におけるキリスト教の諸相を多角的に検討するとともに、キリスト教や宗教と関わりの深い思想家や作家を手がかりとして、宗教が人間経験にとってもつ意義を考えます。
業績
■主要著書
  • 宣教師の日本語文学 研究と目録』(共著)(郭南燕編著、勉製出版、2023年)「クラウス・リーゼンフーバー神父の著述と司牧の日本文化への貢献」
  • 『キリスト教文化事典』(共編著)(丸善出版、2022年)「文学編」編集担当、項目「キリスト教文学」「聖人伝の精華『黄金伝説』」「近代文学とキリスト教」ほか
  • 常の中の聖性』(共編著)(教友社、2021年)序文、「ヴィクトール・E・フランクルの人間観と宗教観——「意味」の根源としての神——」
  • Christianity in East and Southeast Asia,Edinburgh companions to global Christianity〉(共著)(Edinburgh University Press, 2020
  • 『生きる意味キリスト教への問いかけ』(共編著)(オリエンス宗教研究所、2017年)「エディット・シュタイン『十字架の学問』への道とその霊性」
  • 『クラウス・リーゼンフーバー小著作集(全6巻)』(編訳)(知泉書館、2015/2021年)
  • 『異文化の中の日本文学』(共著)(弘学社、2013年)
  • 『文学、社会、歴史の中の女性たち』(編著)(丸善プラネット、2012年)
  • 『キリスト教をめぐる近代日本の諸相——響鳴と反撥』(共著)(オリエンス宗教研究所、2008年)「森有正の「経験」思想における信仰——神経験と神の定義」
  • 『いのちに寄り添う道』(共著)(一橋出版、2007年) ほか

■主要論文
  • 「詩人的実存とキリスト教信仰」(「新キェルケゴール研究15」2017年)
  • 「エディット・シュタインの『十字架の学問』への道—「精神的危機の時代」からの歩み」(「白百合女子大学キリスト教文化研究論集17」、2016年)
  • 「須賀敦子の信仰と文学——その分岐点と交差点」(「三田文学」116号、2014年)
  • 「たまきはる命としての生死——呼応する魂の響き合い」(「白百合女子大学キリスト教文化研究論集14」、2013年)
  • 「神谷美恵子とキリスト教——魂の認識への献身と人間の宗教性」(「上智大学キリスト教文化研究所 紀要31」、2013年)
  • 「森有正における「経験」の地平」」(「比較思想研究」第38号別冊、2012年)
  • 「構造と神秘——森有正の「経験」思想におけるパスカルとデカルト」(「白百合女子大学キリスト教文化研究論集13」、2012年)
  • 「森有正における「経験」の創造(中)——本体論的証明をめぐって」(季刊「現代文学」71号、2005年)
  • 森有正における「経験」の構造——アブラハムの生涯を重ねて(季刊「現代文学」63号、2001年)
  • 「森有正における「経験」の生成——『バビロンの流れのほとりにて』連作を中心にして」(季刊「現代文学」62号、2000年) ほか
経歴
■経歴
東京大学文学部卒業、同大学院人文社会系研究科修士課程修了。白百合女子大学宗教科非常勤講師等を経て2009年同准教授、2015年4月より現職。

■所属学会
日本基督教学会・日本宗教学会・比較思想学会・日本比較文学会・日本キリスト教文学会・日本カトリック神学会
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